映画『お嬢さん』の感想

他所から連れてきた子供を外の世界とは隔絶した空間に閉じ込めて何十年ものあいだ性暴力をし続ける加害者とその被害者と格差社会のなかで詐欺の使いっ走りをさせられ性被害も受けている被害者がいて、被害者の二人が自分たちを支配し暴力を振るうために使われた物を破壊したり、ときにはその過程で得た知識やアイテムを利用したりして目標達成に向かっていっていた。人間や地位なども含めた、今自分が持っているアイテムの利用によってお話が展開していくのがけっこう印象的だったような気がします。
なんか権威勾配があるなかで暴力を振るわれる側がお行儀よく抵抗したりお行儀よく沈黙したりしていたら、いずれ今以上に外界からは見えない地下の部屋に連れていかれてしまうんだよって感じだったような。最後の方は気持ち悪い加害者同士で気持ち悪く野垂れ死にすることになりますよ、気持ち悪いね、という流れがあったと思うんだけど、見終えてから少し日が経つと性暴力と気持ち悪い加害者たちのシーンがあんなにたくさんあったのに、記憶のなかではその部分が話の展開の軽妙さと秀子とスッキの華やかさと美しさと艶めかしさとちょっと笑える恋愛模様の強いインパクトで覆い隠されてけっこう薄れてしまった気がする。それと同じ感覚が秀子とスッキのなかでも起きているのなら、それは悪いことではないのかなと思ったけど、現実的には長い期間受けてきた被害の記憶なんてそうそう薄れるものじゃないし、鑑賞者の自分があの酷い加害を矮小化してしまいそうになるって、わたしの問題なのか作品の描き方のせいなのか分からないけど、ちょっと危ういかもとも思いました。事前に内容を調べず見たけど、今こういう状況でなく、女性同士の恋愛映画ももっとたくさん作られていれば、また違った感想を思い浮かべたような気もします。